■1.侵略する日本軍か、戦争に引きずりこまれた日本軍か
次の二つの中学歴史教科書の日中戦争に関する記述を読み比べていただきたい。
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1937(昭和12)年7月7日、北京郊外の盧溝橋(ろこうきょう)で起こった日中両国軍の武力衝突(盧溝橋事件)により、日中戦争が始まりました。
戦火は華北から華中に拡大し、日本軍は、同年末に首都南京を占領しました。その過程で、女性や子どもをふくめ中国人を大量に殺害しました。(南京事件)。しかし蒋介石は、政府を漢口、ついで重慶に移して、日本軍への抵抗を続けました。[1,p188]
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1937(昭和12)年7月7日夜、北京郊外の盧溝橋で、演習していた日本軍に向けて何者かが発砲する事件がおき、これをきっかけに、翌日には中国軍と戦闘状態になった(廬溝橋事件)。事件そのものは小規模で、現地解決がはかられたが、日本側も大規模な派兵を決定し、国民党政府もただちに動員令を発した。こうして、以後8年間にわたる日中戦争が始まった。
同年8月、外国の権益が集中する上海で、二人の日本人将兵が射殺される事件がおき、これをきっかけに日中間の衝突が拡大した。[2,p199]
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■2.同じ日本の中学生がかくも違った教科書で歴史を学んでいる
前者で描かれた日本軍は能動的に中国を侵略している。多感な中学生時代に、こういう歴史教科書で学んだら、我が国さえ中国を侵略しなければ日中戦争は起きなかった、と考えるに違いない。
これは、中学歴史教科書で50%以上のシェアを持つ東京書籍の『新編 新しい社会 歴史』である。尖閣海域で我が国の巡視船に体当りしてきた中国漁船の船長を無罪放免してしまった政治家などは、こんな歴史教科書で育った人だろう。
後者の教科書で学んだ中学生は、国際政治の難しさを学ぶだろう。自国が間違いを犯すこともあるし、何者かの陰謀で戦争に引きずりこまれることもある。そうした中で、自国の平和と安全を守るには、よほどの知恵が必要だと痛感するかもしれない。[a,b]
こちらは扶桑社『新しい歴史教科書』で、まだ4%に過ぎないが、来年度の採択シェアを伸ばしている。
両方とも、平成17年の検定に合格しているのだが、同じ日中戦争をまるで違ったように描いている。これはほんの一例で、それぞれの教科書は、各時代を全く異なった歴史観で記述している。
同じ日本の中学生がこれほど異なる歴史教科書で学ぶとは、なんとも異様な事態だ。中学校の歴史教育という一般国民の常識を形成する教育過程で、こんなことが許されてよいはずはない。